国産羽毛の悲しい歴史

国産羽毛の画像
写真は野生の白鳥です。羽毛の原料には使われていません。

現在、国産羽毛はありません

 現在日本で使用されている羽毛は、ほぼ全て輸入品です(2020年現在)。羽毛輸入量は中国48.3%、台湾29.3%と、中国・台湾で総輸入量の75%以上を占めています。データを下に示します。

※2020年財務省貿易統計より

 

 

 高級で人気と言われているフランス産は4.9%、ポーランド産は2.9%と、非常に希少だということが分かります。

 

 高級羽毛の産地といえばフランスや北欧

 

 ですが、昔の日本は羽毛輸出国でした。

 

 「日本貿易精覧」(東洋経済新報社 1935年)に1883年から1915年まで羽毛の輸出記録があります。主な輸出先はフランス、イギリス、ドイツ、香港でした。なんと、今とは逆にフランスにも輸出していたのです。

 

 最も高く売れたのがアホウドリの羽毛で、伊豆諸島の鳥島で採取されました。

 アホウドリは翼を広げると2.5メートルに達する北半球最大の海鳥で、一羽から大量に羽毛を採取できました。しかし、乱獲の影響で絶滅しかけ、1906年に保護鳥に指定され捕獲が禁止されました。

 

 

『アホウドリを追った日本人』より 平岡昭利著 岩波新書

『アホウドリを追った日本人』より 平岡昭利著 岩波新書

 

 野鳥を捕獲して羽毛を採取すると、生態系に影響を与えてしまいますが、ヨーロッパや中国などは食用として水鳥を飼っていました。主にアヒルやガチョウです。

 

 食用として飼っているなら、副産物として羽毛を取ることができるので、野鳥を獲るよりも効率よく羽毛が取れ、生態系にも影響を与えません。そのため、ヨーロッパや中国は羽毛を安定して採取でき、産業として成立したのです。

 

 日本では水鳥を飼う習慣がなかったので、結局羽毛は輸入に頼ることになってしまい、高級品となりました。戦後、羽毛布団は贅沢品ということで40%の物品税が課せられていましたが、1969年に廃止となりました。

 

※参考文献『羽毛と寝具のはなし』日本経済評論社    1993年発行

 

2021年11月追記

最近、岩手で飼育されている国産ダックの羽毛が出てきたようですが、弊社では取り扱いしておりません。