羽毛布団を仕立て直すことを「リフォーム」と言ったり、「打ち直し」と言ったりします。
結論から言うと、どちらも同じ意味です。
羽毛布団の打ち直しは、木綿布団の打ち直しから来ています。
木綿布団の「打ち直し」とは、長年の使用で潰れて固まった綿を再生して、ふっくらした綿に戻すことです。(現在は機械で再生していますが、昔は紐を張った弓で打ちながら、紐の振動で綿をほぐしていたことから【打ち直し】と呼んだようです)
昭和初期、布団は家庭で作るものでした。綿は高級品で寿命も長かったので、「打ち直し」をして繰り返し利用してきました。
布団の中綿がへたってきたら綿を取り出し、「綿屋」へ綿を持ち込み、「玉綿(たまわた)」と呼ばれる畳の大きさほどのシート状の綿にふっくらと打ち直してもらい、それを布団の生地に詰めて仕立てました。上記の写真のように、布団を仕立て直すための本も出版されていたくらい、各家庭で布団を作ることは一般的なことでした。
「犬神家の一族」という映画で、金田一耕助(石坂浩二)が商店街で旅館の女中(坂口良子)と綿屋の前で出会うシーンがあります。
坂口良子は背中に綿を背負っていて、看板には「綿打直」と書いてあります。おそらく綿を打ち直しに行くところだったのでしょう。映画の時代設定は敗戦直後の日本なので、その当時では綿を背負って綿屋へ持っていくということは当たり前の光景だったということです。
時代は変わり、布団の仕立て直しや修理を布団屋が代行するようになってきました。
そのうち綿を再生することを指す「打ち直し」が、綿を再生して仕立て直すところまでをまとめて「打ち直し」と言うように変化してきました。
木綿布団の仕立て直しが打ち直しと呼ばれていたので、羽毛布団を仕立て直すことも「打ち直し」と言うようになりました。
『夜具ふとん』にも、羽毛布団の仕立て直し(修理)のことが書いてあるので、昭和30年代から羽毛布団は修理していたことが分かります。
下に本文を一部抜粋してみます
羽布団の修理
(中略)完全消毒の設備を持った、信用ある専門店に依頼し、中味の羽を除塵機(じょじんき)にかけて、細かい塵埃(じんあい)をとり去り、更に乾燥機にかけて完全消毒をしてもらうことこそ、修理の意義があるといえます。
(中略)
この大修理も、まず使用始めてから十年と見てよく、費用は、消毒、表側洗濯などで五千〜六千円。
(原文ママ)
現在のリフォーム(打ち直し)と同じ工程で修理を行っていることが分かります。
リフォームという言葉は、打ち直しという言葉が徐々に古くなっていったので、新しい言葉に置きかえようとして生まれた言葉です。ですが、現状「打ち直し」も「リフォーム」もあまり浸透していないので、どちらの言い方も残ってしまっている状態です。